● 「わが不老長寿法」(続)その3
岡山弁護士会弁護士  宮 本  敦 
(サポーター,元日本裁判官ネットワークメンバー) 
1 私は3か月に1回の割合で血液検査を受けているが,平成19年4月の検査の結果が出た時,医師が「どうしたんですか。」と私に聞いた。私が怪訝(けげん)な顔をして黙っていると,医師は「検査の結果が随分よくなっているんですよ。どうしたんですか。」と再び言った。なるほど,そういうことだったのかとガッテンした。

2 検査報告書を貰ってよく見ると,中性脂肪やコレステロールの数値がそれぞれ30前後低下しているのみならず,血糖値が44,ガンマGTP(飲酒量に関わる数値)が27低下しており,いずれも堂々たる正常値である。医師は「これならどこへ出しても恥ずかしくありませんよ。」と言った。私は「後は体重ですね。」と言うと,医師は「体重も頑張って下さい。」と笑っておられた。体重も少しずつ減っている。

3 私はこの2年余り,仕事がとても大変で,無茶な生活をした。仕事を頑張るために「やけ酒」も随分飲んだ。仕事がかなり楽になった平成19年3月から,「酒は飲むが,やけ酒は飲まない。」いう新しい原則を作った。そのころ,通算すると何回目かの「新生活改善運動」に取り組み,生活習慣を改善し,新目標を設定し,実践を開始したのである。その成果が2か月後の血液検査の結果に現れたということである。未だ新計画は完成しておらず,日々実践しながら修正しており,少しずつ進化を続けているが,その成果が目に見えるので,一層頑張る意欲は強まっている。

4 確かにやけ酒は飲まなくなった。その結果目に見えてガンマGTPの数値が低下した。毎週1回程度は懇親会など飲酒の機会があるが,週1回は飲酒してよいことになっている。その日は,日頃飲酒を控えている反動で,多少飲酒量が増えているように感じるが,飲酒する日や宴会での食事量は控え目にして,料理を少し残すように努力している。今は休肝日は週1回であるが,そのうちに月,木の週2回を休肝日にする目標である。それ以外の日は,日本酒のワンカップ1合か,ビール500CCだけに押さえており,それ以上飲みたくて負けそうなときは,冷たい日本茶をガブ飲みするか,すぐに寝てしまうことにしている。節酒の日の飲酒は夜11時以降に限定しており,酒を文字通り「百薬の長」とすることに成功したなどと嘯(うそぶ)いている。

5 酒を愛した歌人若山牧水は「さびしみて 生ける命の ただひとつの 道連れとこそ 酒を思うに」と詠んだが,肝硬変で死亡したと言われている。その牧水が飲酒を禁じられて詠んだとされる「足音を 忍ばせて行けば 台所に わが酒の壜(びん)は 立ちて待ちおる」を知って,いずれも共感したものである。そういえば次女が小学生になって間もないころ,用もないのに私の書斎に来ては,あちこち探しまわって,隠しておいた一升瓶などを見つけては,「お母さーん!またお父さんが一升瓶を隠しているよ。」と大声で叫んで言いつけたり,お父さんに酒を止めさせる方法と称して罰金制度を考え出し,確かビールのカンやワンカップのビンは1個50円,一升瓶は500円だったと思うが,小遣いの荒稼ぎをされたことを懐かしく思い出した。そのころ頑張って全面禁酒し,7キロ減量に成功したこともあったが,その頃はいつもイライラして機嫌が悪かったと家族が嘆いていたとのことである。そして,その頃は未だ悟りの境地には到達できず,減酒には失敗した。

6 ほどよい飲酒は薬になるが,飲み過ぎると人生のいつか必ず付けを払わされる時が来ると言われている。私はニコニコ節酒により,名実ともに酒を百薬の長にしたい。仕事が多忙過ぎたり,仕事一筋の人生というのでは,人間として十分成長できるかどうか疑問がある。時には酒も飲んで,談論風発,話が面白くて内容もあるひとかどの人物になりたいものだが,その道は遙かに遠いようである。私は,今後も飲酒道の達人を目指すこととし,不老長寿の自称免許皆伝を目指しているのと同様に,いずれ飲酒道免許皆伝を名乗る日が来るよう努力したい。
(平成19年6月1日)