● わがB級グルメ道 
岡山弁護士会弁護士  宮 本  敦
(サポーター,元日本裁判官ネットワークメンバー)
1 私は「B級グルメ道」の達人を目指している。A級グルメとなると,おそらく金に糸目をつけずに徹底して美味しい飲食物を追求することになるのであろう。B級グルメとなると,安くて美味しいものを目指すのであろうが,必然的に安ければ沢山食べることになりそうである。しかし私の目指す「B級グルメ道」は,安くて美味しいものを「少し」食べるという,いささか特殊性を有している。これは「わが不老長寿理論」に基づく修正によるものである。

2 私が日本ソバを好むことは既に何度も書いてきた。日本ソバにはルティンというポリフェノールが含まれているので,抗酸化物質を含む不老長寿食品として,私の不老長寿計画に重要な役割を与えられており,私も意識して計画的に日本ソバを食べることにしている。そのためこの数年間毎週1回,日曜日の朝食としてザルソバを食べることにしてきた。味にも結構うるさい。ザルソバのつゆも,市販のものでも結構おいしいのではあるが,どこか満足できず,結局本などで研究して,自分にあったザルソバのつゆを自分で作ることにした。そして種々試した結果,本よりも少し甘めのつゆで,とても満足できるつゆを簡単に作ることができるようになった。市販のソバの茹で方にもコツはあるが,自分で茹でて,自作のつゆで食べるザルソバは,安くてとても美味しくて満足しており,「わがB級グルメ道」において,とても重要な地位を占めている。日本ソバについては,いずれ手打ちソバと暖かいソバに挑戦することになるだろう。

3 私はソーメンも好きである。ソーメンは健康によいのかどうかよく分からない。格別健康によい物質を含んでいるという話も聞かないので,「わが不老長寿計画」において,格別の地位を占めているというわけではない。ソーメンを食べると良質のデンプンを摂取するという意味しかないのであろうが,しかし美味しい食べ物ではあるので,人生をより楽しくするという意味で,「わがB級グルメ道」に取り込もうというのである。

4 以前何回か,わがやに数名の友人を招待して,1泊でテニス合宿をしたことがある。テニスコートを予約して土曜の午後3時間テニスをして,夕食はわがやに握り寿司やピザなどを配達してもらったり,妻の手料理などで大いに盛り上がり,大酒を飲んだりする。翌日の日曜日にも午前中3時間テニスをして,駅の近くの食堂で大ジョッキのビールで宴会をして解散するのである。とても楽しい会である。

5 1泊した翌日の朝食にソーメンを出したことが2度ある。最初の時はソーメンがとても好評で,お代わりの希望があったが,残念ながらお代わりの余分はなかった。その次の機会にも朝食にソーメンを出した。前回お代わりの希望があったので,その時もお代わりに備えて多少多目に用意したところ,甚だ不評で,大量のソーメンが残ってしまった。いずれのときもソーメンのつゆは妻が作ったものであり,ほぼ同じ味であったと思う。私も最初の時はとても美味しいと思ったし,2度目のときは余りおいしいとは思わなかった。なぜなのだろう。

6 実は今年も,8月にわがやでテニス合宿をすることになり,朝食にソーメンを出すことになりそうである。そこで今度は失敗のないように,以前お代わりを希望されたときのように美味しいソーメンを出そうと考えたのである。なぜ以前,好評と不評の違いが生じたのだろう。最初のときは木箱に詰められた,何年物かの古くてやや金額の高いソーメンを買ってきたが,2度目のときはお中元で貰ったソーメンを使用した。やはりソーメンそのものに原因があったのだろうか。

7 そこで今回は「細工は流々」ということで,以前買ったソーメンと同じソーメンを買ってきた。また自分でソーメンのつゆを作ることにし,妻に聞いたり,本でいろいろと調べてみた。そして自分でも美味しいと思えるソーメンのつゆが作れるようになったのである。来客用にはコンブや削りかつおでダシを取るが,自分用にはダシの素で代用するので十分であり,砂糖の量は本の記載よりも幾分多くするという結論になった。そして木箱のソーメンで何度も試してみた。すごく美味しい。「さー,これで行けるぞ!」。

8 わが事務所は,昼休みには全員で,応接机を囲んで各自が持参した弁当などで,雑談したりテレビを見たりしながら食事をするのであるが,私が実験を繰り返して,「ソーメンの免許皆伝」の腕前になったという自慢話をした。すると何だか事務員が皆,目を輝かせて聞いている。私がつい,「味を見たい?」と聞くと,即座に全員一致で,大きな声で「ハーイ!」と答えた。

9 わが事務所は月に1回程度の割合で,昼食会として色んな店を食べ歩いている。善は急げ。早速わがやでソーメンの昼食会をすることになり,いろいろと準備をした。前日の夜,来客用のソーメンのつゆを作った。薬味の細ネギとシソは庭のプランターから取ってきた。ショウガとミョウガは買ってきた。そしてついにその時がきた。  「いただきまーす!」と皆で弾んだ声で挨拶した後,大きなガラス容器の氷水に入ったソーメンに箸を付けるとすぐに,全員が「美味しい!」と大きな声で言った。「ソーメンてこんなに美味しかったかしら。」などと,がやがや賑やかに,1人2輪(100グラム)のソーメンが驚くべき速さで胃に治まった。どうやら合格点である。

10 昼食会の後半に,ソーメンの他に小さ目の1匹のウナギの蒲焼きを5等分したもの,1丁の豆腐を6等分した冷や奴,私の手製のキュウリの麹漬け,デザートの桃とブドウなどが程よいペースで消えて行った。全体としてとても好評な昼食会で,それぞれの来客をもてなす際の参考にするとの話も出た。

11 これで無事にテニス会を迎えられそうである。おそらくソーメンには合格点がつくだろう。私も暫くは金を惜しまず,木箱入りの美味しいソーメンを楽しんでみよう。かくしてこのソーメンも 「わがB級グルメ道」に仲間入りすることになる。
以 上(H21・8・1)