● 司法10大ニュース(平成20年)

第1位 最高裁が裁判員候補者に通知(12月,当ブログ11月24日欄参照)

平成司法改革最大の改革内容がいよいよ始動です。

第2位 司法試験合格者数について,日本弁護士連合会が緊急提言(7月,当ネットHP「judgeの目その21」参照)

いわゆるペースダウンの提言です。平成司法改革の一翼を担ってきた弁護士会の今後の動きが注目されます。

第3位 婚外子の国籍法規定は違憲との最高裁大法廷判決 (6月)

戦後8例目の最高裁による違憲判決で,これを受けて,12月5日に国会で国籍法の一部を改正する法律案が可決成立しました(平成21年1月1日施行)。

第4位 東京高裁長官であった竹ア博允(ひろのぶ)氏が,最高裁長官就任(11月,当ブログ11月21日欄参照)。

サプライズ人事だっただけでなく,裁判員裁判実施・成功への強い姿勢の表れと感じさせられました。

第5位 青写真判決見直しの最高裁大法廷判決 (9月)

土地区画整理事業を巡る訴訟で,42年ぶりの判例変更でした。事業計画の決定段階は,青写真に過ぎないとして訴えの門前払いをしてきたのを改める方向への判決です。

第6位 原爆症認定集団訴訟の判決が相次ぐ(1年間)。

大阪,仙台各高裁,長崎,大阪,札幌,千葉各地裁などの判決が1年間を通じて相次ぎました。厚生労働省の認定基準も動きました。

第7位 福島県立大野病院事件について,医師に無罪の福島地裁判決(8月)(当ブログ8月23日欄参照)

日本の医師会,医師注視の中での判決でした。検察側は控訴せず確定しました。

第8位 司法の大きな不祥事が相次ぐ。下山事件で戦後8回目の弾劾裁判による6人目の罷免(12月)や,京都家庭裁判所書記官が私文書偽造等で逮捕・起訴(12月)。

裁判員裁判が始動し,司法への国民負担が議論される中での残念な出来事でした。

第9位 8年半続いた岡口判事による法曹関係者のためのHP閉鎖(11月)

ファンが多かっただけにこれも残念の一言です。閉鎖の原因を考えると,裁判官の表現活動への影響も心配されます。

第10位 日本裁判官ネットワークの神戸総会が開かれる。メンバー裁判官の安原浩さんの退官記念講演会を開催(9月,当ブログ9月30日欄参照)

安原浩松山家裁所長に限らず,島田仁郎最高裁長官や井垣敏生大阪高裁判事(役職名はいずれも退官当時のもの)など,高名な裁判官の退官がこの1年間に相次ぎました。


 今年の司法10大ニュースをながめていますと,今年の特色は,平成司法改革の最後の仕上げとそのための態勢づくりがなされたのではないか(1位,4位)と思われる一方,平成司法改革について従来とは異なる動きも大きくなってきたこと(2位)が一番でしょうね。来年も引き続き,その後の動きから目が離せません。
 その他の今年の特色は,社会に大きな影響を与える判決が多かったこと(3位,5位ないし7位),司法全体への信頼を損ねたり(8位),逆に司法の一員からの発信にブレーキがかかる(9位)などとても残念な事態があったことなどです。
 なお,国会で薬害肝炎被害救済法が成立(1月,当ブログ1月12日欄参照)し,薬害肝炎訴訟も全面解決へ(11月〜12月,残った日本製薬と原告団との基本合意へ)向かったことも大きなニュースでした。ただ,昨年の10大ニュースの第2位で触れましたとおり,昨年末に大筋で解決の方向性が出ていましたので,今年は,国会等で成果がでた年という意味で,司法の動きとしては番外にさせていただきました。ご了承下さい。