● Judgeの目その12 変わる人事評価制度
  
〜裁判官だけでなく,裁判所職員にもビッグウエーブ

浅見 宣義(大分地方裁判所) 

裁判官だけでなく,裁判所職員にもビッグウエーブ
 「裁判官も所長や長官に評価される」と聞かれたら驚かれる人もあるかもしれません。平成司法改革の中で進んだ裁判官制度改革は,裁判官の人事評価に関する規則(平成16年1月7日最高裁判所規則第1号)を生み出しました。これは,裁判官の人事評価を透明化・客観化するためのもので,評価権者,評価の基準・視点・方式,評価書の本人への開示,不服申立手続等を規定しています。

 裁判官には,独立性がありますので,人事評価には馴染まないという意見もあったのですが,再任や部総括指名等の適否を判断する必要性から,人事評価自体はやむを得ないとされ,裁判官の独立のためには,その人事評価手続を透明化・客観化することが重要とされたのです。

 この動きが直接裁判所職員に波及したというわけではないようですが,公務員制度改革の一環としての新しい人事評価制度制定の動きが,裁判所職員にも押し寄せているようです。国家公務員一般については,平成17年10月31日人事管理運営協議会幹事会申合せで,新たな人事評価の第1次施行がなされているようです。同申合せを見ると,施行結果は,第2次以降の施行に反映されるようです。今後,国家公務員一般の動きをにらんで,裁判所職員についても,新たな人事評価制度の構築だけでなく,人事制度一般の改革が行われていくことでしょう。


一つのポイントは
 別稿の「裁判官に職員の勤務評定権を」にありますように,私は,10年近く前から,職員の勤務評定に裁判官を関与させることを訴えてきました。その主張は読んでいただければわかりますが,(1)裁判部門の充実強化のために,裁判官の法的権限を明確にすべきこと,(2)裁判官には職員への指揮監督関係(裁判権,裁判官会議による監督権)があり,指揮監督権者が評定者になるのは自然であることなどを根拠としています。

 少し小難しい話かもしれませんが,サラリーマンの方にはよくわかっていただけるのではないでしょうか。裁判所の職員には,主任書記官や首席書記官などの上司と職種の違う裁判官という2種類の上司がいると思っていただけるとわかりやすいでしょう。私は,どちらからも情報を得て,多面的に評価するのが,本人をもっとも理解し,本人のモチベーションを高め,その才能を伸ばす道だと思います。


今後の方向性について
 今後私が主張してきた方向に事態が動くかどうかわかりませんが,どのような制度ができたとしても,裁判官の声をはじめとして,多面的な評価を職員の人事評価に反映する努力を怠ってはいけないと思います。評価権者,評定者,調整者になった人は,できるだけ担当裁判官の声を詳しく聞いていただきたいと思います。また,裁判官も,裁判に力を注ぐと共に,共に仕事をする職員を適正に指導監督し,その能力を高める努力をするべきでしょう。真面目な裁判官ほど,裁判に埋没する危険がありますが,職員の指導監督も,裁判所や利用者にとって大事な仕事なのです。
(平成18年6月)