● データ・アンケートから見る裁判員制度
平成22年5月29日
弁護士 中村元弥

第1 はじめに
マスコミ公開の意見交換会の記事より

第2 有識者懇談会提出のデータから
http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/saibanin_kondan/pdf/giji_10_04_16.pdf
http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/saibanin_kondan/siryo_07/pdf/siryo_5.pdf

新受件数と罪名傾向
19年 2643  うち,性犯罪538(20.4),薬物135(5.1)
21年 1662  うち,性犯罪282(17.0),薬物148(8.9)
 (21年は5/21−3/末,以下同じ)
謙抑的な起訴? 殺人未遂→傷害,強姦致傷→強姦
各庁の状況
1位 千葉/2位 大阪/3位 東京
支部との逆転現象 静岡・福島
実施庁の約半数で刑事合議体は1つしかない
 共犯起訴の自白事件と否認事件の同一裁判官での処理(しかも否認が後)
未済件数−滞留問題
1月末 新受1276−判決210=1066
3月末 新受1662−判決444=1218
5月2日の竹崎長官発言と現場への影響 「竹崎記念(G1)迅速化出世レース?」
辞退・不選任
47/49の神話(全国第1号事件)−本来の分母は100
選任手続イメージの変化 cf アメリカで見た陪審員選任手続
審理期間
自白事件でも6ヶ月弱,公判前整理手続4ヶ月 証拠開示・求釈明
実審理期間3日以内は216/444 事前宣伝の「7割が3日以内」との齟齬
 当面4日コース標準設定の慎重運転の影響か
評議時間
自白事件でも平均約400分(中間評議含まず)
それでも,アンケートでは「短い」という自由記載が29/781
有罪率100%
認定落ちあり 現住建造物放火→建造物等以外放火
謙抑的な起訴・認定
被害者参加
2つの意見陳述 316条の38/292条の2
 292条の2の性格・意味づけをどのように裁判員に説明するのか
控訴
検察官控訴なし−どう見るか
 検察官は従来当然控訴する事案でも控訴していない
 −検察が満足しているという批判論は早計
破棄なし−控訴審審理の在り方 東京高裁中山判決をどう読むか
10 量刑傾向
性犯罪←→親族間犯罪
保護観察付執行猶予の増加−更生保護への関心増大 保護司制度
 更には行刑への関心−教育プログラム

第3 裁判員アンケートから
http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/saibanin_kondan/siryo_07/pdf/siryo_2-1.pdf

分かりやすさ
弁護人は「分かりにくい」
 「検察側と弁護側の力量の違いは否めない感」
 「個人の活動をベースにしている弁護士の負担が大きく,検察側に比べて圧倒的に不利」
被告人の反省等の有利な情状をどのように伝えるか
 被告人質問の難しさ−表現能力の制約
分かりやすさの「罠」
 言いかえ  例 「殺意」(司法研究「難解な法律概念と裁判員裁判」14頁)
  「相手が死ぬかもしれないが,それでも構わないと思い,あえて行為に及んだかどうか」(従来型の「未必の故意」)
  「人が死ぬ危険性の高い行為をそのような行為であると分かって行った」(新案)
感想
事前と事後の落差
 96.7%が「良い経験」/55.7%が事前消極
「やりたくなかった」の41.1%が「非常によい経験と感じた」
自由記載
http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/saibanin_kondan/siryo_07/pdf/siryo_2-4.pdf
「宝の山」(有識者懇談会酒巻委員発言,議事概要4頁)
質問手続
 「大丈夫ですねと言われると,大丈夫じゃないですとは言いにくい」
法廷審理
 証拠の絞りすぎ
被告人のバックグラウンドを知りたい
写真 解剖写真のトラウマ 性犯罪の再現写真
 通訳の正確性に関する指摘
評議
「付箋方式」(判例時報昨年11月11日<2052>号大塚・野原論文)
 呼び方 番号/名前
報道
 取材方法/傍聴席の態度