● 調停委員選考手続等に関する読者とのメール交換

 読者の方から,調停委員選考手続等に関するご意見を記載した貴重な投稿メールをいただきました。
 もちろん,ご意見は,調停委員選考手続に関して,ご自身及びご家族が経験された事柄に端を発していますし,こちらも関係者の聴取ができているわけではありませんので,割り引いて考える必要があることも否定できないのですが,全体として,調停委員選考に係わる裁判所,裁判官,裁判所職員,調停委員が誠実に耳を傾け,自らの意識と姿勢を振り返り,善意の調停委員希望者の方及びその周囲の方々に,今後誤解を与えることのないような丁寧な振る舞いが必要に感じられました。投稿メールは,裁判官ネット内でも反響が大きく,代表的な意見で,投稿者の方に返信をさせていただき,再度メールもいただいたのですが,そのやりとりはとても貴重なものと思われ,裁判官ネット内だけでやりとりを埋もれさせるには残念に思われました。そこで,今後の調停委員選考手続が,今以上に,より良いものになることを心から願って,投稿者の方のご了解を得て,メールのやりとりをホームページ上でも紹介します。



○ 調停委員選考手続等に関する投稿メール

 どの様な経路をたどってこのホームページに到ったかよく分かりません,苦情ではありませんが,より良い司法を司る方が多くなって頂きたく投稿させて頂きます。
 私は,調停制度は,直接訴訟により法的な白黒決着をつけるのではなく,日本人文化に合う,話し合いによる決着という世界に誇る争い事の解決方法と理解しています。しかしこの時,立ち会う調停委員と呼ばれる人達の選考基準に少々疑問を持っています。まず先日どの様な理由か分かりませんが,私の家内が,調停委員の方に推薦されたから裁判所に来るようにと裁判所の庶務課から呼び出しが来ました。家内は訳も分からないままに裁判所へ出かけて行き,庶務課長より説明を受け,社会奉仕でありボランティアであるから是非調停員を引き受けたいとの事で喜んで帰ってきました。数日後推薦者といわれる方が弊社に来られた時に,家内が挨拶をして欲しいとの事で,事務所に出向いた所その方の第一声が,「御主人は関係有りません,奥さんにお願いしていますので」なんと失礼な言い方でしょうか。私は,家内に社会奉仕の機会を与えていただいたことに対してお礼を言おうと応対に出ただけになのに。家内は,私の会社の経理を担当していて,かなり忙しく社長の私としても,如何に社会奉仕といえども余り時間を取られたくないのが本心でした。その家内の社長であり,夫である私に対して,何も相談なく勝手に推薦しておいて「あなたは関係ない」とは約60年生きてきてこれほど侮辱された事はありませんでしたが,その場では,笑顔で応対しました。私達夫婦は結婚35年になりますが,一度も夫婦げんかをした事が有りません,何故なら,お互いに余り色々な物事に対して腹を立てない性格だからと理解していました。今回のこの推薦者(調停委員)の失礼な言い方には,さすがの私も怒りという物を人生で初めて感じたと言っても良い程腹が立ち,家内に断る様に言いましたが,すでに履歴書などの書類は提出してあるし,推薦者の立場というものもあるから今更断れないと言っていました。しかし余りの腹立ちに,家内に断りなく,裁判所に出かけ,私の考えで一方的に取り下げてきました。その後機会を見て家内に取り下げた事を話せばよいと気楽に考え居てましたが,裁判所から面接日の連絡が来ないから行って聞いてくるなどと言いながら,争い事で困って見える方達に少しでも力になる事が出来ると喜びも語ってくれます。勝手に取り下げてきたと言い出せず,裁判所に再度お願い出来ないかと尋ねても,一度取り下げられたものは駄目との返事で,それでは,他の調停委員からの推薦を出して頂いたらどうかと聞いた所それなら良いとの返事で,友人の調停委員をしている方に全ての経緯を話し,家内に内緒で再推薦して頂き,無事取り下げた事がなかった事になり私としては,家内のボランティア精神の芽を紡ぐことなく無事事無きを得た訳です。その後面接の日の連絡も来て家内は,面接用に服まで作り,周りから見ていてもワクワクして面接の日を待っているのが分かりました。面接の当日は,私は,ゴルフで居ませんでしたが,ゴルフをしながら,「いよいよ面接の時間だけどどうしているかなー面接官と楽しく質問したり色々な説明を受けているのかなー」家族も会社の社員もみんな協力すると言ってくれて,家内も幸せ者だうまく行ってくれたら本当に良い事だと思いながら家に帰ってくると,家内は,悔し涙を流しながら,話してくれました。面接は,裁判官と,2人の書記官で3人だったそうです。「裁判所を知っていますか,裁判所をどう思いますか,裁判所に望む事は何ですか,家事調停が主になりますが,男性の調停委員の方と一緒ですが宜しいですか,会社での仕事は経理となっていますが,資格を持っていますか,それでは最後に交通違反をしない様にして下さい。」一般社会を全く理解しなく,「男性の調停委員と一緒ですが,宜しいですか」とはどの様な感覚での質問なのか,60歳近い女性に対して,まだ男女の関係を心配しての質問なのですか,最初の裁判所という言葉を全て私の会社名に置き換えると,入社試験と同じになります,調停委員予定者の面接は,裁判所への入社試験ですか,一企業の経理を担当している者が,税理士資格とか,会計士の資格を持っていますか,交通違反をしないようにとはどの様な意味を持った事ですか,犯罪にも重犯罪と,軽犯罪がありますが,どちらも犯さないのが当たり前で交通違反をしない様にを人殺しをしないようにと言い換えたら誰でも違和感があるのではないでしょうか。調停委員予定者の面接は,その人の人格,品位を見る為の物ではないのですか。裁判所の仕事を少しでも助け,悩み苦しんでいる人を少しでも早く助けようと折角ボランティアが出来ると喜んでいた家内は,官僚がひどいと聞いてはいたが,完全に女と馬鹿にされたと言って,即刻断ってしまいました。裁判官,書記官の多くの方がまだ特権意識を持ち,私達一般人を少し馬鹿にされているのではないでしょうか,あなた達は,1円を稼ぐ苦労を知っていないでしょう,お金は,国から頂ける物と思っていませんか,あなた達官僚は,権力を持っていますが,その権力は,私達一般国民が,豊かに平和に暮らす事が出来る様に,あなた達に与えているのであって,あなたの権力ではありません。「分かり切った事で失礼しました。」
 もう一つ。今の調停委員の方々は,本来なら1人でも居てはならない,品位,品格の低い人達が大勢見えます,裁判所内で,「先生」と呼ばれる事に快感を覚える人達が多く,又それになりたい人が居ると,「推薦してあげても宜しいが」と,自分の役職を利用している人が多く見えます。調停委員会も私達一般から見ると「仲良し子良し会」で,自分たちの知り合い,好みに合う人しか推薦していない事です。調停委員からの推薦はやめて,各種団体,自薦などに絞られた方がより公正で優秀な調停委員会が出来ると思います。
 私は,今回の家内の悔しさ,無念を裁判所内の誰かに訴えたかったのですが,方法がなく,調停委員に推薦して頂き,面接の場で直接,裁判官と,書記官に苦情を言おうとも考えていました。幸いこの日本裁判官ネットワークにたまたま行き着き,誰も読んで頂けないかもしれませんが,この様に長々と書く事が出来少し気が楽になりました。司法を司る裁判官の皆様,少しでも宜しいですから,国民目線に近づいて下さい。期待をしています。


○ 返信メール

ミドリガメ

 奥様が調停委員候補者になった際の不快な体験などから,裁判所に対する不信を抱いたという趣旨の投書(メール)を読みました。奥様が折角ボランティア精神を発揮されて,調停委員への誘いに応じていただいたのに,そのような不快な気持ちになられ,辞退されたことを知り,以前調停も担当し,調停委員候補者の方との面接に関わった経験のある者として,至極残念に思いました。
 特に,奥様を推薦した調停委員の方が投書者の方が経営する会社を訪問された際の言動から,推薦してやったという「上から目線」を感じられたことは,残念でなりません。調停委員会(調停協会のことでしょうか?)が「仲良し会」になっているとのご批判や,調停委員が候補者を推薦すること自体へのご批判からは,第3者から見ての苦々しい気持ちが伝わってくるようで,考えるべき点を含んでいるように思いました。
 ただ,若干誤解があるのではないかと気になった点もあります。調停委員候補者との面接の際の裁判官の質問と説明の中に,a 「男性調停委員と一緒に仕事をすることになりますが,いいですか」,b 「何か資格がありますか」,c 「交通違反には気をつけて下さい」という文言があったことを,社会経験を積んだご婦人を馬鹿にしているのではないかという趣旨の非難をしておられますが,このような質問や注意は(その言葉通りかはわかりませんが)私の経験からも理由のあることのように思いました。まず,aの点は,男性調停委員と女性調停委員は,通常ペア又はトリオで調停に臨むことになります。お互いにかなり協力して仕事をしなければならないということなので,そういうことが苦手ということはないかどうかを確かめたかったのではないかと想像するのです。bの点は,資格をお持ちの方には,特にそれに関連する専門的な調停事件に関与していただきたいという趣旨で質問したのではないかと思われます。cの点は,調停委員になられる方は立派な方ですから,一般の刑事事件を起こされることは心配していないのです。しかし,交通事犯は立派な犯罪です。もしそういうことがあると,調停委員の立場が厳しくなりますので特にご注意を申し上げたのだと考えます。私もこのようなご質問やご注意をした経験がありますので申し上げることができます。
 若干お聞きづらいことも書きましたが,今後とも裁判所のために建設的なご意見をお願いします。


○ 再度の投稿メール

 ご丁寧な返信を頂き本当に感謝いたしています
 一時は,直接裁判所に乗り込み,面接をした裁判官に質問の内容の真意を聞こうと思うくらい真剣に腹を立てていました。投稿メールを読んでいただいた事だけでも感謝し,気持ちも少し収まりました
 現職の方の返信メールでの感想とご意見,本当に有り難く読ませていただきました。私も家内に同じような説明をして一時の腹立ちで断らなくても良いのではと助言は致しましたが,かなり上から目線での面接だったようで,私が書いたこと以外にも相当きつい質問があったようです。私も,調停委員は,本来ですと裁判所側からお願いして受けていただくようなものと判断していたのですが,面接官は,「させてやる」というような態度だったようです。質問をもう少し柔らかく一般人が分かり易いようにしていただくと今後,この様な誤解が無くなるように思います。
 家内は夫である私が言うのは少しおかしいかもしれませんが,楽天家で,人望も厚く,社員,社員の家族のもめ事など全て相談に乗り俗に言います,サラ金地獄に陥っていた社員の奥さん等もサラ金会社と直接交渉して解決したり,離婚の問題なども幾つも解決してきました。かといって,「肝っ玉かーさん」ではありません。裁判所で調停をすることを楽しみにしていたのに残念でした。
 感想とご意見を頂いた現職の方のメールを見せ,私なりに面接官の真意を家内に説明をし,このような立派な方が本来は多いと説明していこうと思っています。裁判官の方々は,大変賢い方々ですので,こんな事はご存じだとは思いますが,「人間は,本来全ての人が善人である」という性善説の上で判断されることを切にお願いいたします。職業柄,罪を犯した人,争い事をしている人々達と常に接して見えると,性悪説に考えがいくのではないでしょうか(一般人の嫌な考えかもしれません)。

 裁判官の方達とメールで意見交換でき本当に有り難う御座いました,気持ちが楽になりました,目の前にそびえる裁判所が一時は見るのも嫌でしたが,皆様方のような裁判官がみえることが分かっただけでも感謝いたします。
今後は,小さな小さな力しかありませんが,裁判所に対してお手伝いできるような機会が有れば,出来るだけ協力をしていきます。

 一度お会いしてお礼を言いたいくらい感謝しています,日本裁判官ネットワークの益々の発展を祈念しています。