● 弁護士任官どどいつ(34)

竹内浩史
11月21日(土)午後、渋谷道玄坂「フォーラム8」にて、「日本裁判官ネットワーク創立10周年記念企画」を開催した。
今回は、それにちなんで作った都々逸集。

    「神の手」見落とす 神ならぬ身は 誤ったときには 謝って

今回の企画の目玉は、鳥越俊太郎さんの講演「えん罪と裁判官」だった。
明白な誤判をした場合にも「裁判官はなぜ謝らないのか」という厳しい内容で、参加者一同考えさせられた。
たまたま、サッカーワールドカップの予選フランス対アイルランド戦で、フランスの決勝点直前のハンドの反則を審判が見落としたという事件が起きたばかりだった。反則はビデオにはっきり映っており、当の選手も認めている。
審判は謝るのかどうか、気になった。
誤審を防ぐには審判を増員すべきではないかという意見も出ていて、裁判官の問題と似ていると思った。

    ネットワークが 喝采あびた あれは十年 前だった

続いて、日本裁判官ネットワークが創立された1999年9月から3年くらいの活動のテレビ報道を中心に編集したビデオが上映された。
残念ながら、私が弁護士任官したのはその後の2003年4月なので、初めて見たシーンも多く、興味深かった。当時のネットワークに対するマスコミの大きな期待が感じられた。
たまたまその晩、NHKのBSで、ちあきなおみの特集番組が放送され、鳥越さんも出演していたそうだ。
2次会のカラオケでは「喝采」を歌った。さびの部分を「あれは十年前」と即興で替え歌にして盛り上がった。

    労働審判 3倍になり 1回結審 やむなしか

続くシンポジウムでは、成功している労働審判の手法を一般民事事件に応用できないかという提言もされた。
最近の読売新聞の1面トップ記事には「労働審判 3年前の3倍」とあった。
労働審判の評判が高く、申立件数が激増している。
法律では3回以内で結論を出すのが原則とされているが、実際の運用では1回で解決しようと目指している地裁もあるようだ。
事件数が3倍になっている背景事情もあるかも知れないが、私の知人が申し立てたケースでも、1回で満足な解決がされたそうだ。
この労働審判を一般の民事訴訟に応用できないか、労働審判官に弁護士の非常勤裁判官(民事調停官・家事調停官のように)を導入できないか。参加者からは慎重論も出たが、検討に値するように思う。

    傍聴マニアは 民事もいるよ 物まね上手か? 裁判長

最後にパーティーを開催。 自称「傍聴マニア」の方が続けて参加して下さったので、やはり傍聴は刑事の方が面白いのではないかと声をかけたら、「僕は民事専門です」と意外な答が返って来た。そして余興で、東京地裁民事部の某裁判長の物まねを披露して下さった。
知る人ぞ知る、労働審判制の創案の功労者、そして駄洒落の達人である。着任時の裁判官会議の自己紹介で「挨拶は上手か?」と爆笑を取ったことが思い出された。
それはそうと、「傍聴マニア」の方々は、裁判官の一種のファンクラブとして大事にすべきだと前々から思っている。
日本裁判官ネットワークの企画で、交流の場を持ってもいいのではないだろうか。

(2009年12月)