● 弁護士任官どどいつ(33)

竹内浩史
8月上旬、初の裁判員裁判が東京地裁で開かれ、大きく報道された。
私は夏休み中だったので、一部始終をリアルタイムでテレビで見ることができ、私のブログhttp://blog.goo.ne.jp/gootest32に6回連続で感想のどどいつを掲載した。今回はそのダイジェストとしたい。

    (第1首)裁判員には 黒ではなくて 虹の法服 着てほしい

いよいよ裁判員制度での初めての法廷が開かれる日を迎えた。
裁判員用の法服を作るという案も取り沙汰されたが、結局は立ち消えになり、それぞれ私服で法廷に出ることになった。
裁判員のテレビドラマ「魔女裁判」では、互いに好きな色の名をニックネームにして呼び合うという趣向があった。6色の法服を作って選んでもらうというアイディアもあり得たのではないだろうか。
ともあれ、裁判員に選任される方々には、裁判官のように黒一色の法服ではなく、虹のように多彩な意見を反映してほしいと願っている。

    (第2首)「呼出し」無いのに 地裁に行って くじに外れて ホッとする

久しぶりに東京地裁に行ってくじ引きに参加した。学生時代以来と思う。
万一当たったらどうしようと思っていたので、外れてホッとした。

    (第3首)坊主は屏風に 上手に描くが 下手に描けない 裁判員

今回の裁判では、法廷画家たちは、過去に例のない苦労をしているようだ。
あまり上手に、写実的に描いてはいけないので。
下手をしたら、裁判員を特定してしまうことになるから。

    (第4首)口火を切るのは 勇気がいるが 慣れてしまえば おてのもの

注目を集めた裁判員からの質問。前日は1人だけだったが、一晩明けたら6人全員が代わる代わる質問をした。とても良かった。
とにかく、普段の生活でしているように、疑問に思ったことは、結論に影響するかどうかなど考えないでどんどん質問した方が良いと思う。

    (第5首)夢は開くが 評決いかに? 15、16、17年?

正直言って、生きているうちに国民参加の裁判を見られるとは思っていなかったから、まるで夢のようだ。
第1号としては大成功だったと思う。
それにしても、懲役の求刑が検察官16年、遺族20年に対し、判決15年となったのは、どのような評決の内訳だったのか知りたいという気持ちは、皆さんにも残ったのではないだろうか。個別の意見は明らかにできないとしても、裁判員と裁判官の意見の大勢が判明するように、評議の秘密(守秘義務)の例外を設けた方が良いと考えている。思い付きだが、このホームページとブログ
http://blog.goo.ne.jp/j-j-n/に「評決公表のアイディア」を連載しているので、ぜひご覧を。

    (第6首)実は昔は 裁判官も やっていました 記者会見

初の判決後に、裁判員の記者会見が行われた。とても建設的な改善意見なども聞けて、いい内容だった。裁判長のコメントも報道された。しかし、望むらくは、初めて裁判員と一緒に審理を経験した裁判官の側も、別に記者会見をした方が良かったと思う。そんなことを提案する人がいなかったのかも知れない。およそ、担当裁判官の記者会見などあり得ないという先入観が支配的になっているのだろう。しかし、実は先例がある。本で読んで印象的だったのは、家永教科書裁判の最初の一審判決をした杉本裁判長の「現場教師の証言に感銘を受けた」旨の記者会見。他に新聞で読んだのだが、四日市大気汚染公害の一審判決後にも、裁判官の記者会見が行われたそうだ。ちなみに、裁判長は弁護士任官者だったという(未確認情報)。

(2009年10月)