● 弁護士任官どどいつ(25)
竹内浩史(さいたま地裁川越支部) 
「死刑事件で 始めるよりも 国賠訴訟に 裁判員?」

 このHPの原稿の締切日は、5月25日(日)である。
 たまたま、午前中に見ていたテレビ朝日「サンデープロジェクト」で興味深い特集をやっていた。
 その主張は「国賠訴訟にこそ裁判員制度を!」。面白い案だと思った。
 このHPにも、よく「裁判員制度は、負担が重い重大刑事事件よりも行政訴訟で導入すべきではないか」との意見が寄せられるが、私はこれまで消極意見だった。かえって、民主主義や三権分立を崩してしまうのではないかという疑問が拭えなかったからである。大きな政策に対する国民の意見は、まずは選挙で選ばれた議員が国会で制定した法律に反映されているはずである。行政がそれを実行したら、最後の最後に少数の国民の意見(価値観や感覚)で覆されるといった事態が生じるのは、好ましくないのではないかという疑問が払拭できなかったからである。
 しかし、実際に国民に損害が発生した個別事案の国賠訴訟で、国家賠償法1条・2条の適用の可否を判断するだけであれば、そのような問題は少ないように思う。今後、検討に値するのではないか。

 このコーナーの司会は、ジャーナリストの大谷昭宏さんである。
たまたま同日の東京新聞の朝刊の書評で、これに関連して亀井洋志「司法崩壊」(WAVE出版)の書評を書いていらっしゃった。
 書評の結びは、「私は裁判員制度はすでに実施が決まった以上、よりよいものであってほしいと願っている。そのためには裁判所が”画期的な変革”を遂げ、国民に豊かな果実を示して見せなければならない。本書の個々の指摘の底に流れているのも、そんな思いのはずである。」

 本論とはあまり関係ないが、この本には裁判所を通じて取材を受けた私と工藤涼二裁判官も登場する(172〜173頁)。
 ところで、私もつい先日まで知らなかったのだが、大谷さんの弟さんが最高裁事務総長であることを御存知だろうか。

 「内と外とで 司法を変える 知る人ぞ知る 御兄弟」
(平成20年4月)