● 悪魔の法典(8)
チェックメイト 
第8条「裁判官は、判決を言い渡した後に弁明することはできない。ただし、理由をろくに書いていなかった決定については、この限りでない。」(民事訴訟規則206条)

 古今東西「裁判官は弁明せず」は不文律であろう。
 敗訴した当事者や弁護士の中には「判決理由が不十分で納得いかないから、裁判官は説明せよ」などと息巻く人もいるが、これは誤った対応である。なぜならば、判決をした裁判官が後付けで理由を補足できるとすれば、あまりにも裁判官に有利なルールとなってしまうからである。むしろ、そんな弁明の機会は与えずに「理由不備」だと言って一方的に攻撃すれば良い。
 もっとも、このルールには現行法上も例外がある。
 民事訴訟規則206条「抗告を理由がないと認めるときは、原裁判所は、意見を付して事件を抗告裁判所に送付しなければならない。」がそれである。
 特に破産・免責や保全・執行などの分野で、具体的な理由を付さずに「申立てを相当と認め」という程度で出した決定に、想定外の抗告が出たときには、この規定は重宝である。
 決定をした裁判官は、抗告理由書を熟読した上で、それに反駁する意見書の形で、改めて決定理由を書き足すことができるのである。
(平成20年10月)